>>笑いを喚起するものは、くすぐるといった肉体的刺激から精神的刺激まで、その範囲は広い。しかしそうした多様性の中にも統一が、つまりユーモアの「論理」もしくは「文法」ともいえる共通パターンが存在することを次に示す。 ユーモアの例から。
1) マゾヒストとは朝冷水を浴びるのを好む人。だから暖かいシャワーを浴びる。
毎朝冷水を浴びるというマゾ的行為をやめることで自己を痛めつけるマゾヒストの話。この話を支配しているのは、通常の論理法則を逆用したものである。
マゾヒスト→マゾ的行為を好む人=温かいシャワーなど浴びないと思われる。
暖かいシャワーを浴びる→これもマゾ行為=普段は冷水を浴びることを好む人が、マゾヒストゆえにそれをしない。
2)ルイ十五世につかえる侯爵が旅先から不意に家に戻った。妻の部屋に入ってみると、なんと妻は司教の腕の中。侯爵はちょっと戸惑いの色を見せたが、すぐに冷静になると窓のほうへ行き、身体を乗り出して人々を祝福し始めた。
「あなた。何をなさっていらっしゃいますの?」と苦悩に満ちた妻。
「なあに、司教がわしの務めをしてくれているから、わしが司教の務めをしているところさ。」